糧食尽きはててあかざの葉を食へり傷病兵等衰へて行く
小泉苳三
*あかざ: 畑や空地などに多い雑草。葉は茹でて食べることができ、同じアカザ科のホウレンソウによく似た味がする。シュウ酸を多く含むため生食には適さない。
あたらしき国を護りの戦を予想しゆけり老兵君は
吉田正俊
つらなめて街行く兵の足音の遠ざかる時わが涙うかぶ
柴生田稔
あまりにも月明ければ、草の上に まだ寝に行かぬ兵とかたるも
折口春洋
相共に老いたる兵として出でし戦ひなれば君は帰り来ず
樋口賢治
からだより大き荷を負ひ前こごみに兵還りゆく昨日も今日も
香川 進
包囲に移りきたれる敵兵が霧の中にて喇叭(らつぱ)を吹けり
宮 柊二