天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

戦争を詠むー兵(3/5)

  糧食尽きはててあかざの葉を食へり傷病兵等衰へて行く

                         小泉苳三

*あかざ: 畑や空地などに多い雑草。葉は茹でて食べることができ、同じアカザ科のホウレンソウによく似た味がする。シュウ酸を多く含むため生食には適さない。

 

  あたらしき国を護りの戦を予想しゆけり老兵君は

                         吉田正俊

  つらなめて街行く兵の足音の遠ざかる時わが涙うかぶ

                         柴生田稔

  あまりにも月明ければ、草の上に まだ寝に行かぬ兵とかたるも

                         折口春洋

  相共に老いたる兵として出でし戦ひなれば君は帰り来ず

                         樋口賢治

  からだより大き荷を負ひ前こごみに兵還りゆく昨日も今日も

                         香川 進

  包囲に移りきたれる敵兵が霧の中にて喇叭(らつぱ)を吹けり

                         宮 柊二

 

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あかざ