天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

恋(13/13)

  鼻濁音がきれいだなあと誉めらるる訳のわからなさに恋をしき

                       梅内美華子

  恋は木をつつく連続音に似て小啄木鳥(こげら)見つけてうれしきふたり

                        渡辺松男

  生きることは人恋うること恋は孤悲 ほととぎす今年の初音が届く

                        三枝昂之

  おみなみな美しくなる夏は来ぬ恋は孤独な蛍なり、せよ

                        三枝昂之

  抱かれて聴くカザルスの「鳥の歌」苦しき恋の飛翔夢見て

                        岡本弘子

*『鳥の歌』: カザルスの編曲・チェロ演奏で有名なスペイン・カタルーニャ民謡(原曲は、カタルーニャクリスマス・キャロル)。

 

  ひと岩を隔てて止まりし一匹のやがてもつるる水の上の恋

                       楠瀬兵五郎

  両方のてのひらにつつまれてゐる「待つ恋」は肉のやうにやはらか

                       尾崎まゆみ

  筆の闇・舞台の闇の異なるを海やまの恋のごとくなげくも

                        水原紫苑

*下句の「海やまの恋のごとく」の解釈が難しい! 海や山が邪魔をしているような恋?

書いた作品と舞台にした作品との違いの大きさを比喩した歌のようだ。

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小啄木鳥(こげら)