恋(12/13)
若(わか)夏(なつ)の恋はかならずやぶれしよ不空羂索(ふくうけんざく)
観音(くわんおん)重さ知られず 長岡千尋
*不空羂索観音: 胎蔵界曼荼羅観音院の一尊。羂索は漁猟の道具で,どんな魚や鳥も捕らえられるように,必ず人を救うのでこの名がある。
もはや叶はぬことばかりなりなかんづく相対死(あひたいじに)をするほどの恋
山本かね子
*相対死: 江戸時代の法律用語。心中、情死のこと。
ひたに待つ恋はくるしゑ追はるるより追ふ恋を君よわれは選らばむ
夢前を夢成らぬまま過ぐるとき出火のごとき戀ぞはるけき
森岡美都子
*夢前: かつて兵庫県の南西部、播磨(中播磨)に存在した夢前(ゆめさき)町のことだろう。
二年前のあなたの恋を聞き終えてバスを待ちいし昨日も昔
谷岡亜紀
うらわかき恋に骨格あるころの岩波新書『日本の思想』
小高 賢
*岩波新書『日本の思想』: 新しい時代の思想を創造するために,いかなる方法意識が必要であるかを問う.日本の思想のありかたを浮き彫りにした文明論的考察。
われに棲む恋の奴よ腰細(こしぼそ)の月光さまにつかみかかるな
高野公彦