天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

晩年を詠む(2/3)

  青嵐去れり五十を晩年とおもひしばらくのちにおもはず

                        塚本邦雄

  紅鶴(フラミンゴ)ながむるわれや晩年にちかづくならずすでに晩年

                        塚本邦雄

  晩節に入りて苦しも片なびくわれも茅(ちがや)かかがよひのなか

                        高嶋健一

*高嶋健一: 高齢になるにつれ、人工透析を受けるなど健康状態が悪化したが、それをうけて自身の生命について思いを馳せるようになった。享年74。

 

  晩年という美しさのひとときの裏木戸にして蝉の殻あり

                        香川 進

  人間に楽しき晩年などなけんその晩年にわれはなりをり

                        佐藤志満

*佐藤志満: 佐藤佐太郎の夫人として、歌誌「歩道」の発行に力を注ぎながら生涯にわたり精力的に作歌を続け、晩年には、自宅庭前を中心とする「志満調」と呼ばれる独自の歌風を確立した。享年95。

 

  今死ねば今が晩年 あごの無き鵙のよこがほ西日に並ぶ

                        河野裕子

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フラミンゴ