湖のうた(2)
下弦の月おぼろに霞む湖見つつ透ける白魚生きながら食ふ
春日井 廣
目くるめく光と熱気たちこむる湖(うみ)にして幾千のフラミンゴの声
葛原 繁
みづうみに浮く氷塊が目の前にわれて新しき断面の青
佐藤志満
西日さす湖(うみ)の面(おもて)のしらむまで吹雪はおろす北の山より
東 長二
鴨のからだの通りしほそき跡のこし薄暮の色にしづみゆく湖(うみ)
横山未来子
平衡を保てるもののするどさに夜となりゆく湖はあり
真鍋美恵子
瓜の花の交配を終りて来しといふ人と見てをり白く光る湖(うみ)
真鍋美恵子
朝開けのさ霧山ぎはに遠のきて盆地がなかに湖(うみ)たたへ見ゆ
藤沢古実
二首目: フラミンゴの群衆する湖で有名なのは、タンザニアにあるナトロン湖であるが、作者の葛原繁は現地に行って見たのであろうか?
真鍋美恵子の一首目: 湖はもともと平衡を保っているものだが、それをわざわざこうした歌に詠むとは、作者の日常に平衡感が欠けていたということか?
藤沢古実の歌: 下句の表現に少し違和感がある。盆地の中に水を満々とたたえた湖が見える、ということなのだが。