天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鳥のうた(8/12)

  水銀灯ひとつひとつに一羽ずつ鳥が眠っている夜明け前

                       穂村 弘

*水銀灯: ガラス管内の水銀蒸気中のアーク放電により発生する光放射を利用した光源。代表的な使用法として街灯や体育館、ガソリンスタンドなどの照明器具に使用されることが多い(辞典より)

 

  首伸べてひたすら北へ飛ぶ鳥ら一途なるものの危うさ持ちて

                       黒住嘉輝

  雨の夜を身じろぐ鳥の体内に果実の種がほのかあかるむ

                       柏崎駿二

  鳥の目はまどかなれどもものいはずくいくいと見て見ぬふりをする

                       今野寿美

  しののめの薄くれなゐにほのぼのと鳥が鳥呼ぶこゑ柔らかし

                      武下奈々子

*しののめ: 東雲と書き、「夜明けの空が東方から徐々に明るんでゆく頃」を意味する古語・雅語である。

 

  夕明かる空の洞に風うごき見えざる鳥のほうほうと鳴く

                       上田一成

  耿(かう)として鳥わたりけり大ぞらの冷えゆく季(とき)は茸(くさびら)の季

                       高瀬一誌

*耿(かう)として: 明るい様子。  茸: きのこ。

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水銀灯