天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

男を詠む(3/4)

  あなかしこ やまとをぐなやー。国遠く行きてかへらず なりましにけり

                         釈 迢空

*あなかしこ: 連語《感動詞「あな」+形容詞「かしこし」の語幹》。

「ああ、恐れ多い。」の意。

 

  雪のこる遠くの山に背をむけて麦ふんでゐる一人の男

                         矢代東村

  またひとり顔なき男あらはれて暗き踊りの輪をひろげゆく

                         岡野弘彦

  固きカラーに擦れし咽喉輪のくれなゐのさらばとは永久(とは)に男のことば

                         塚本邦雄

塚本邦雄の有名歌のひとつ。上句は短歌定型のくびきを比喩しているのか。下句は

そんな短歌を捨てきれない男の負け惜しみなのか。

 

  をとこたちは竹を伐りしやゆく河の朝のひかりが胸へ折れ来る

                         永井陽子

 

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麦踏み