天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが歌集からー花(7/10)

  年々に居間に咲かせるアマリリス老いゆく妻のたのしみにして

  石楠花の手入れする人おもむろになんじやもんじやの樹を教へたり

  山門を入りくる女咲き満てるつつじの花に顔の明らむ

  時くれば花はちるなり極楽寺白雲木の白き小花も

  谷戸に飛ぶ黒き揚羽をひきよせて蜜を吸はしむ赤き石楠花

  比企ケ谷袖塚の由来聞きたればひとしほかなし著莪の花むら

  細竹に支へられたる山百合の倒れむばかり花七つ垂る

  あぢさゐの咲くあぜ道をわがゆけば白き蝶とぶ早苗田の上

  見るよりも踊るがたのし紫陽花の里のまつりの老婦人連

  あしがらの紫陽花まつりの婦人連踊りをはれば腰まがりたり

  老人のふたりが飲めるオロナミン鉄路に沿ひて昼顔咲けり

  今年また会ひにきにけり極楽寺庭に咲きたる花さるすべり

  薪背負ひ本を読みゐる石像がむくげの花の陰に見えたり

  「東海道分間絵図」の一里塚遊行寺坂に彼岸花咲く

  このあたり入水の場所と伝へたり赤きむくげの花咲く水辺

  いまは無き太宰旧居の前に咲く太宰が愛でし百日紅

  高句麗をのがれし人の住みしとふ大磯の郷皇帝ダリア

  ひとところ赤むらさきの群落は浜に咲きたるおしろひの花

  江ノ電江ノ島駅に活けられし今朝あたらしき極楽鳥花

  弘前さくら前線追ひかけて北上したり「はやて」の座席

  しみ出づる水にそまるか断崖にうすむらさきのイワタバコ咲く

  山百合の雄蕊の風に揺れてをり雌蕊の先を紅く染めつつ

  わが鼻も老いたるらしも潮風に匂はざりける梔子の花

  ギボウシのうつむく元に姫檜扇水仙朱きやはりうつむく

  朝光に青きあかりを点(とも)したり苔(こけ)のさ庭の竜胆(りんどう)の花

  祭礼の提灯さぐる軒下にすだれなしたる朝顔の花

  海を来し瓶、缶散れる草むらに浜昼顔は咲きてそよげり

  涌く水の谷戸の草地に色あはくつり舟草の咲きのこりたる

  水仙も菜の花も咲く吾妻山師走の海の風寒からず

  潮風に花弁白くひかりたり虫引き寄する浜菊の花

  拘置所を囲める塀に沿ひてゆく春来りなば桜咲く道

 

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皇帝ダリア