わが歌集からー花(9/10)
菜の花のまぶしき山ゆ見下せばささくれ立てる一月の海
梅園の出店の主人この年の梅の開花の遅れを嘆く
菜の花と河津桜の中腹に客待ち顔の出店がならぶ
横浜の西に位置して稼働せる馬酔木花咲く下水処理場
桜咲く奥津宮(おくつのみや)の力石持ち上げないで下さいとあり
眠りたるレオを抱き上げ帰路につく花咲く桜並木の下を
庭に出てしばらく歩きまはりしが額紫陽花の下に眠りぬ
いつもより七日は早き満開の桜見に来し高遠城址
フィボナッチ数列になる渦巻を松ぼつくりに向日葵に見る
三月(みつき)かけ蔓をのばしてのぼりきぬ二階の部屋をのぞく朝顔
咲き満てる河津桜の山腹を人つらなりて九十九折(つづらおり)ゆく
谷間をうづむるほどに咲かせたしおかめ桜の根府川の郷
足のそば頭のそばに供花おきて口開く遺体に手を合せたり
この春も長興山にのぼり来てつつかひ棒の桜を見上ぐ
三人の女腰ふるフラダンス藤の花房おもく垂れたり
地下鉄の駅を地上にのぼりきて瑠璃色の花ベロニカに遇ふ
絵を一枚描いてくれれば昼飯をやるからと言はれ花の絵を描く
小田原城開花と聞きて来て見ればうすくれなゐの莟雲なす
咲き初めし桜根方にシート敷き酒酌み交す倭人といふは
苔むせる石が処刑の場所といふ花のなみだの葛原が岡
蒔田から弘明寺までを川沿ひに花のさかりの並木見てゆく
一日を花に狂ひて疲れたり夕餉にと買ふトロの鯖寿司
水仙の咲けるなだりをのぼり来て菜の花越しに見る富士の峰