天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

思草(おもひぐさ)

 ナンバンギセルの古名である、万葉集に以下の一首が載っている。ハマウツボ科の一年生の寄生植物で、日本、インド、フィリピン、中国などに分布する。

     照り翳り南蛮ぎせるありにけり     加藤楸邨

     曇り日や花開かずに思ひ草      小田芙美子

     刈る萱に紅ひとかけら思ひ草      白鳥 峻

     異草にまぎれてかなし思ひ草      富安風生

 

  道の辺の尾花がしたの思ひ草今さらになど物か思はむ

                    万葉集・作者未詳

  おもひ草葉末にむすぶ白露のたまたまきては手にもたまらず

                     金葉集・源 俊頼

  とへかしな尾花がもとの思草しをるる野辺のつゆはいかにと

                    新古今集・源 通具

  人知れぬうき身にしげきおもひ草おもへば君ぞ種はまきける

                    新勅撰集・藤原隆房

 

思草(おもひぐさ)