天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

葛(くず)

葛の花

 秋の七草の一つ。奈良県(大和の国)の国栖(くず)が葛粉の産地であったところからの命名。漢字の「葛」は漢名による。葉が風にひるがえると裏の白さが目立つことから、別名、裏見草。平安時代には裏見を恨みに掛けた和歌が詠まれた。根には多量のでんぷんを含んでいる。葛根湯は、解熱の漢方薬。また葛粉から 葛餅をつくる。


  萩の花 尾花葛花(くずばな) 撫子の花 女郎花 
  また藤袴 朝顔の花     万葉集山上憶良


  露しげき尾花くず花吹く風に玉ぬきちらす秋の夕暮
               新続古今集源師光
  秋の野の尾花くず花咲きしより色のちくさに月ぞうつろふ
                  『草庵集』頓阿
  まねきとめつなぎとどめて秋の野の尾花葛ばな道も
  ゆかさず         『晩花集』下河辺長流


  別れこし妹がこころやたぐへけむはひまつはるる野路
  の葛花          『うけらが花』橘千蔭


  葉隠れににほふ真葛の花も見んうら吹きかへせ月の下風
                『琴後集』村田春海
  川岸にうかべすてたる船にだに綱手づたひにきぬる葛花
                『草径集』大隈言道
  吹き過ぐる風をしおぼゆ。あなあはれ 葛の花散る
  ところ なりけり       『水の上』釈迢空


  葛の花未生のまなここぼれゆくあかるき月のなみだ
  みちたり          『青章』山中智恵子


[注]右上の画像は、「季節の花300」
     http://www.hana300.com/kuzu00.html
   から借用した。