数・数学のセンス(1/2)
数や数学の概念を取り入れた短歌を取り上げてみたい。数や少数の単位には複雑な名前がついているが、多くの場合使用することが滅多にない。たまたま出会ったときにあらためて事典で確認することになる。例えば、名前のついている数字の最大数は、無量大数=10の68乗 である。また名前のついている最小の少数は、涅槃寂静=10のー24乗 である。
数学のつもりになりて考へしに五目(ごもく)ならべに勝ちにけるかも
美(いつ)くしき数式あまたならびたり。その尊さになみだ滲(にじ)みぬ。
石原 純
*作者は、理論物理学者でもあった。日本に相対性理論を紹介するなど、物理学の
啓蒙に大きな役割を果たした。
やわらかなあなたの影が立ち上がる素数のような春の日射しに
吉野裕之
*下句の「素数のような」をどう解釈したらよいか?
分数の意味なお理解できぬままこの少女は神のごとくうなづく
水野昌雄
自然数2000といふが世紀末現象つぎつぎ起こしゐるらし
香川ヒサ
足して足してマイナスとなる数もあらむたとへば空地の昼顔の花
斎藤佐知子