鵜飼
新横浜に行く電車の中、吊り広告から、暇にまかせて。
秋立ちて競輪場に風を巻く北条早雲杯争奪戦
大胆不敵もしも英語を話せたら自由自在にネットサーフィン
丸文字を白抜きにせる「灯台」は「ゆらぐ友達関係」特集
禁断の肌をハワイにさらしたる若き女優の愛国白書
ぎすぎすの女載せたり太らないカラダへ先手必勝作戦
箸先に黒き毛虫をつけて塗る「まつ毛八方美人」といふは
天然ミネラルむぎ茶ふふめばほのかなる甘味ただよふ
さらさら効果
ラベルにはさらさら効果とのみあれど血のこと思ふむぎ茶飲む人
新幹線では、車窓の景色から。
静岡を新幹線に過ぎたれば稲熟れ初めし葉月の田の面
富士川を渡れば思ふいにし世の鳥翔つ音に逃げし軍勢
金華山の麓は岐阜公園になっている。歴史博物館、板垣退助の銅像、織田信長の居館跡などがあり、山頂の岐阜城へはロープウェイに乗れば五分ほどで着く。公園から少し歩いた長良橋の袂に、芭蕉の有名な句「おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな」の碑と鵜匠の技を賞賛した北原白秋の詩碑がある。
長良川をすぐ前に見る宿に泊まる。
篝火の鵜舟くだり來宿の前
山蔭をかがり火出づる鵜飼かな
幸若の謡にくだる鵜舟かな
船縁をたたきてはやす鵜飼かな
かがり火の鵜舟の横を涼み舟
かがり火の炎ふくらむ鵜舟かな
長良川のぼりくだりの鵜舟かな
朝もやの川鵜水脈ひく長良川
水際に羽根ひろげたる川鵜かな
魚もとめ汀あゆめる鷺一羽水に入れぬ烏横目に
上流に雨は降れども長良川鵜飼処の水量乏し
山頂の城仰ぎ見る川の辺の宿の窓辺に鵜飼を待てり
幸若の謡ひびかふ川筋に鮎追ひてくるかがり火の舟
山蔭にかがり火たきて出できたる鵜舟に寄り来夕涼み舟
鵜の鳥はみな川下に向かふらし手縄はりたる篝火の舟
早足にありく速さにくだりゆく鵜舟を追ひてカメラフラッシュ
篝火の炎ふくらむ時に見ゆ魚吐き出だす鵜の長き首
かがり火の六つ並びてゆるゆると川下るなり鵜飼フィナーレ