天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

花・香・艶

「古志」新年号で第一回飴山實俳句賞・古志俳論賞が発表されている。
俳句賞受賞作品も俳論賞受賞作品もなかなか新鮮であった。
俳句賞作品(北側松太)から。
    鎖樋春の氷をこぼしけり
    藍蔵を包みて花の万朶かな
    けふからは若き棟梁夏燕
    刻限に来たためしなし秋扇
    砂の上の舟引きずるや鯊日和
など。花あり香あり艶あり、瑞々しいのだ。こうした感性が作品に現れることが大切である。
俳論賞作品(村松二本)は、飴山實の最晩年の句から5句
    ながらへん雛の古びをめでながら
    蓬摘むそのほかは世を忘れをり
    野遊びやつれだつてさていづこまで
    このところこの世まかせや草の餅
    けさもまた今日のはじまり初音して
を取り上げ、飴山俳句の特徴(ゆったりとした深い息遣い、平明さ)、韻文の魅力、この世もあの世もあらぬ俳諧の風雅に身を任せる生き方、季語が風雅の誠・詩歌の本質と感じさせるほどの感受性 などを論じて説得力がある。わずか5句を元に飴山俳句の特質をまとめている点に感心するのである。