天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

城ヶ島

海鵜の岬

 ずいぶん久方ぶりに三浦半島城ヶ島を訪ねた。以前は、北原白秋にとりつかれて休日のたびごとに来て、白秋の足跡をきめ細かに歩いたものである。今の時期は水仙まつり。観光バスも入っている。



  寒風の天日に干せる鯵、金目 七輪に焼き客を引き寄す
  遊び舟のりば入江のユリカモメ群れて浮かびて波にゆらめく
  しののめの狭間に射せる初春の光かがよふ大島の海
  タンカーの黒き影ゆく東海の波にあまねき朝のひかり子
  城ヶ島水仙まつりに二人きてショパンを弾けり「あかねこバンド」
  城ヶ島の磯辺あるきし女童が渚にほそき脚を拭くなり
  磯ちかき海に投げたる棒を追ひ毛深き犬が波を掻き行く
  初春の光あまねき天空にうすうす残る上限の月
  幾世代棲み継ぎ來しか断崖に糞の雪積むウミウの岬
  城ヶ島岬のはなにわが立てば月消え残る東海の空
  丈低き松の根方に水仙の咲き初めたれば香を嗅がむとす
  安房崎の灯台かすめたはたはとウミウの四羽がとびゆきにけり
  西空に日の傾けばしらしらと遊ヶ崎(あそびがさき)に月ひかり出づ

        初春の光に消えし白帆かな
        安房崎の小さき灯台笹子鳴く


県立城ヶ島公園には、北原白秋の愛弟子・宮柊二の歌碑がある。
  先生のうたひたまへる通り矢のはなのさざなみひかる雲母のごとく

島を一周して帰途についたが、明日も休日のせいか、交通渋滞でバスがなかなか進まない。昼はぽかぽか陽気であったが、日が沈みかけると急激に冷えてきた。鎌倉駅でどっと客が電車に乗り込んできた。まだ初詣の期間中なのだった。