天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雛飾り

     柱あり冬日あまねき廊下あり
     水仙の間と蝋梅の間とありぬ
     雪の香の蝋梅の香のゆきわたり
     逢ひ訣れ逢ひ訣れ雛飾りけり
     雛の間に母のごとくに手を合はす

これらの句は「藍生」三月号・黒田主宰の「雛飾りけり」十五句から抜いたもの。言葉のリフレーンが頻出する。別に感心するほどのことではないが、黒田杏子の特徴ある手法のひとつである。ところで、最後の句はどう鑑賞すればよいのだろう。「ごとくに」から、作者は結婚したが子供がいない。しかし雛飾りは毎年欠かしたことはない。亡き母が残してくれたものだから。自分はその母がしていたように手を合わせている。
 紅藍集に掲載されたわが作品を次に紹介しておく。


          落葉
     燈籠の影を伸ばせる落葉かな
     うづたかきけやき落葉や相撲場
     生徒らの声をききゐる日向ぼこ
     寒風に御霊屋の木々をめきけり
     高層のマンションの群寒波くる