天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

犬猫の俳句

 もちろん犬や猫が俳句を詠むわけない。犬や猫を詠みこんだ俳句の謂いである。短歌では、犬や猫を詠んだ作品はめずらしくない。例えば、塚本邦雄は犬の、小池光は猫の歌を詠んでいる。
しかし、俳句ではかなり珍しい、というか佳品が得がたく難しいのだ。出たばかりの「俳壇」九月号で、「犬と猫のいる俳句」特集を載せている。わが愛読する西東三鬼の例が載っているので、次に揚げる。最初の句は特に有名。

     炎天の犬捕り低く唄ひ出す
     猫が鶏殺すを除夜の月照らす
     猫一族の音なき出入り黴の家


 ちなみに、中原道夫が昨年特選にしてくれたわが猫俳句を、評と共に次に紹介しておく。

     黒猫が水舐めてをり花筏

     [評]猫の飲む水は決められた器に入っているという
       固定観念が、読み下していくうちに、池か水路の
       水に変貌することに少なからず驚く。無論、花筏
       の浮かぶ水は別と考えることは出来るが。