笹鳴
此の時期になると、川べりの藪や山のふもとの墓地では、チャツ、チャツという鶯の笹鳴をよく耳にする。笹子鳴くともいうが、別に鶯の幼鳥の鳴き声のことではない。そう理解されていた時期があった。もっぱら俳句の季語として使われるが、芭蕉や蕪村の作品には出てこないので、明治以降に定着した言葉であろう。次の高浜虚子の句は、松山子規堂横に句碑となっているとのことだが、もっと古い誰かの句があるはずである。
笹鳴が初音に出でし頃のこと
「笹鳴」と「初音」と季語が重なっているととられるし、そうでなくても理屈っぽいので、良い句とは思えない。角川「合本俳句歳時記」の例句にも載っていない。
今日は午後から「短歌人」の横浜歌会なので、午前中1時間ほどを北鎌倉の浄智寺で過ごした。ここの墓地には、渋澤龍彦、磯田光一、島木健作らの墓があるとのことだが、渋澤龍彦、磯田光一が眠る場所は見つからなかった。多分、結界で仕切られた上方の墓地にあるのであろう。
谷戸のそここに笹鳴が聞かれた。
茶の花や島木健作の墓に会ふ
笹鳴や名前確かむ谷戸の墓地
笹鳴の墓地をめぐりぬ松ヶ岡