天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

「短歌人」横浜歌会

 昨日の歌会には、9名の参加者があった。各人、題詠(今回は「すすき」)一首、自由詠一首をあらかじめわが方へ送ってもらい、ワープロ入力して詠草集を作成、当日人数分コピーして配布する。
 以下に、順不同でひとり一首ずつあげて紹介しよう。名前をあげるので、差しさわりのないコメントにしておく。歌会で出たキツイ批評を公開のブログに載せるのは憚りがある。


  つきかげのさやけき縁にちちははとほすすきまゐらせ
  つつましかりき                 三良富士子
  *今は望むべくもないような古典的な情景の歌。結句は別の表現で
   この心情を表したい。


  昔ここに段々畑があったこと教えてやりたし青きススキに
                          金沢早苗
  *見捨てられた畑の跡に青々と芒が茂っている。全体を喩として
   解釈することも可能、との意見も。


  さんぽするバニーズ犬の縄張りは縞すすきゆらぐ高き穂の下
                          岡田みゆき
  *「縄張り」とはつまり小便することを婉曲に言ったもの。
   バニーズ犬はどでかい犬らしい。


  仲秋の月煌々と藪寂し人の立ち居の形ある影
                          若林のぶ
  *電灯を消して名月を家の座敷で観賞している場面かと思ったら、
   藪の近くの出来事らしい。


  啄木が泣いた東京の夕つ方イヤホンに篭るツィゴイネルワイゼン
                          川井怜子
  *上句とツィゴイネルワイゼンの組合せが抜群。「篭る」の
   表記はどうか?


  ふと我にかえれば線路沿いにゆく雀六羽を数えておりぬ
                          平野久美子
  *我々は時につまらないものの数をぼんやりと数えている
   ことがある。雀に対して「ゆく」という言い方は気になる。


  江ノ島の岩屋の奥から吹く風は富士山からとはからうそならず
                          高澤志帆
  *「から」を三箇所に使ってリズム感を出した。
   でもそれがうるさくならないか。


  小籠包(しょうろんぽう)にひそむ丁子(ちょうじ)と八角
  刺激したわたしのはじめての場所         谷村はるか
  *「場所」を身体の特定の箇所と読む人が半数に達した。
   スパイスとしての丁子と八角が利いた初めての店では?


  所在無き時間ながれて秋ふかむ動物園のそれぞれの檻
  *わが歌。上句の言い方がひっかかる、という意見あり。
   全体としては良いという人も。