天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

『俳人蕪村』

 俳句界において、現在のように蕪村が芭蕉と並び称せられるようになったのは、正岡子規著『俳人蕪村』による。これは周知のことだが、恥ずかしながら、今までこの本を読んでいなかった。たまたま昨日、昼休み九段下の本屋に立ち寄って見つけたのでさっそく買った。芭蕉との対比から論じ始めている。

 芭蕉: 消極的美(古雅、幽玄、悲惨、沈静、平易)、秋冬
 蕪村: 積極的美(雄渾、勁健、艶麗、活発、奇警)、春夏

という図式で、例として牡丹の句の数と内容の違いを挙げている。その後には、客観的美、人事的美、理想的美、・・・・用語、句法、句調、文法、材料、・・・・、時代、履歴性行等 さまざまの観点から蕪村俳句の特徴を際立たせている。
 これを執筆していた当時、子規は30歳であり、すでに結核の病状は腰痛臥褥の域に進んでいた。しかしその文章は意気軒昂として読むものを圧倒する。まことに頭が下がる。