天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蝋梅

鎌倉の蝋梅

 鎌倉の寺々の境内では、早くも蝋梅が咲き始めた。蝋梅は中国原産なので唐梅、南京梅とも。わが国には江戸時代はじめに渡来した。花の中心部まで黄色のものを素心蝋梅というらしいが、咲ききった状態ではみな同じに見える。冬の季語だが、手元の歳時記には、明治以前の俳句は見当たらない。歌ではさらに少ないようである。


      蝋梅はもつと淋しい花の筈    飯島晴子
  蝋梅の古木の花のひさしくていつ盛りともなく咲き満つる
                      窪田章一郎


      落葉舞ふ極楽寺切通
      庚申塔藪蔭に啼く笹子かな
      押し寄する師走白波和賀江島
      水かくる水子地蔵も師走かな
      写経せる後姿の師走かな
      

  空洞の切り株覆ひ注連張れり権五郎景正公が弓立の松
  大穴牟遅、少名毘古那の神々の石碑の蔭に笹子鳴くなり
  第六代男神女神が形なす神世七代天地開闢
  水かくる水子地蔵のくろぐろと先亡諸霊に花束供ふ
  葉は枯れて師走の風にふかれけりはや咲きそめし素心蝋梅
  観光の具に供したる観世音親兄弟が跡目あらそふ