天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

三渓園

臨春閣

 JR根岸線根岸駅からバスで本牧市民公園にゆき、上海横浜友好園を通って南門から三渓園に入った。入園料は五百円。以前は内苑に入るときには、別料金をとっていたが、最近は外苑も内苑も料金の区別はなく、一律五百円で済む。まずは海岸門をくぐって内苑に入る。臨春閣、月華殿、天授院、三渓記念館と巡る。乾燥しておだやかな日和のせいか、すべての建物の一階の障子が開けはなたれている。障子には池の波紋が映って揺らいでいる。清々しい景色である。梅の花にはまだまだ早い。紅梅がわずかにほころび始めているにすぎない。外苑に出て旧東慶寺仏殿、合掌造りの旧矢篦原家住宅、旧燈明寺本堂 そして大池の縁を歩く。キンクロハジロの群が艦隊のごとく泳いでいる。
 三渓園は、生糸貿易で財をなした三渓・原富太郎の邸宅であったところ。当時から文人たちがよく遊びにきたらしい。一例にすぎないが、水原秋桜子が短歌を学んでいた頃、師匠の窪田空穂たちとここで歌会を催した。吟行の場所として良く利用されるらしく、今日も老人たちの一団が手帳を携えて雑談していた。ただこうした光景を見かけると俳句も短歌も詠む気にならない。
日が悪かった、としておこう。


  開けはなつ障子の奥にかまど火のあかあか揺るる合掌造り