謎めく
『短歌研究』2月号を読んでいたら、それぞれの歌人の一連の作品の中によくわからない謎めいた歌がふくまれていた。まあ大体がそういう作りにするのだから、驚くにあたらないが。
短歌はもともと短い詩形なので、省略、飛躍、組合せなどですぐに理解できなくなる。故に謎めかすことはたやすいのだが、詩であるからそこには情感がなくてはならない。そんな例を次にあげておく。
玉井清弘
人脈記、豚記と読みて慌ておりニッポンが頭にあればなおさら
その遺書の誰にとどくか知りて書くましぐらに放つ矢の時かなし
穂村 弘
高校に行かせてくれと土下座して転がっちゃった天使のあたま
靴紐を結び直しているときも驀進している夜の全て
中津昌子
赤のなきモンドリアンを前にする世界に小石一つも落ちず
それならば言ふがと言ひて黙りたる口より緑の茎生えるべし