天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

新年歌会

 短歌人・新年歌会が、例年のごとく神田の学士会館で開催された。総合的にコメントをする立場の人たちは、さすがに細かく読み込んできていて、勉強になった。例によって、小池 光のコメントを以下にあげておこう。わが好みだが、なにせ歯切れがよい。


  * 短歌は言い切るべし。読者の眉間にぶち込む。その結果、批判
    や賞讃を受ける。それだけにむつかしい。
    例: 結句を「・・・という」といった伝聞の形にしては
       ダメ。

  * 「野」を使う場合には、十分考えること。日本には、野と呼べ
    る場所は極めて少なくなっている。

  * 動植物に詠み手の主観語を入れるのは良くない。
    例:「順調にそら豆育つ」というような「順調に」が主観語。
      「わが庭にそら豆育つ」なら良い。

  * テレビニュースなどの映像を見て感想を詠む場合、奇麗事に
    すぎないか、わざとらしくないか、ヤラセではないか、と
    いった批判的見方を先ずはしてみることが大切。

  * 言葉のつながり・組み合せでは、付き過ぎに注意が必要。
    例: 「桜えび」と「はなやぐ」との組み合せはマズイ。

  * 文字の繰返しには要注意。
    例: 「絵馬」と「神馬」が一首に出てきてはマズイ。

  * 歌の主体があいまいにならないように。

  * 結句は七音できっちり納めるべし。
    例: 「・・・・耳掻きが三本」 → 「が」をとって
       「・・・・耳掻き三本」でもまだ不十分。
       「・・・・耳掻き二本」というように。


 ただ、毎回のように不思議な現象であるが、コメントをする指導者的立場の歌人たち自身の詠草には、点数があまり入らない。ちなみに、小池 光の次の詠草には、わずか十四点しか入らなかった。今回の最高点は五十二点であったのに。

  そのかみに島倉千代子といへる人歌をうたひてわれをなぐさむ


 この歌への批判は、「そのかみに」とか「といへる人」といった言い方が、島倉千代子に失礼である、まだ健在なのに亡くなったように感じる、といったことであった。