天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

岡井隆研究1

 おおげさな題名をつけるが、これからの意気込みを表すためである。以前に、大枚を払って『岡井隆全歌集』(思潮社)4巻を購入したと書いたが、実はその時点からまだまともに読んでいない。
 岡井隆は、アララギ写実主義からスタートし、古典詠法、前衛短歌、ライトバース、ニューウェーブなど常に短歌方法論の最前線を実作と共に走り続けてきた。現代詩や俳句の技法にも長けているという稀有な歌人である。方法論を開拓するための活動として、フォーラムのプロデゥース、雑誌・新聞投稿歌の選歌、各種短歌賞の選者、短歌カルチャーの講師、超結社小規模歌会主催、短歌朗詠会、詩人・俳人らとの交際 など華麗な経歴がある。よって彼の作品を分析すると現代短歌方法論の全貌を俯瞰できる。もちろんブログで紹介できることには限界があるので、概容にとどまるが、詳細はいずれ評論としてまとめたい(と力んでいる次第)。
 大辻隆弘がまとめた『岡井隆全歌集』の解題があるので、大筋のガイドとして役立つ。
 第一期:写実から前衛短歌の時期
     『斉唱』『土地よ、痛みを負え』『朝狩』『眼底紀行』
 第二期:古典的詠法の時期
     『鵞卵亭』『天河庭園集』『歳月の贈物』『マニエリスム
     の旅』『人生の視える場所』『禁忌と好色』
 第三期:ライトバースの時期
     『αの星』『五重奏のヴィオラ』『中国の世紀末』
     『親和力』
 第四期:ニューウェーブの時期
     『宮殿』『神の仕事場』『夢と同じもの』『ウランと
     白鳥』『大洪水の前の晴天』『ヴォツェック/海と陸』
 第五期:新たなる円熟の時期
     『臓器』『E/T』『〈テロリズム〉以後の感想/草の雨』