天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

藤の実

三溪園にて

 今の時期垂れ下がっている実はまだ未熟である。
寒くなって莢が枯れると、ある日パチンとはじけて
褐紫色の平たい円形の種子が飛び出る。




      藤の実やたそがれさそふ薄みどり  富田木歩
      濯ぎ女に垂るる藤の実妻籠宿    豊長みのる


 横浜の三溪園は、台風の影響をまったく残していなかった。池には睡蓮の青い葉が茂って残暑の日差しを照り返してまぶしい。その青い葉の間の真っ白い花がさらにまぶしい。


      水引の花を分けゆく膝小僧
      つくつくし合掌造りを開け放ち
      朝顔に横笛しのぶ木陰かな
      手をつなぎのぼる坂道木下闇
      藤の実や池のかなたに茶屋の旗
      地に落ちた蝉が見ている青い空


  ぱつちりと目覚めて白き睡蓮の花はまぶしき残暑の光