天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

歌人たちの鎌倉3

腰越漁港から江ノ島を望む

 正岡子規は、明治二十年代に二度ばかり鎌倉に立ち寄ったらしい。全歌集『竹乃里歌』を開いて見ると、あった。一度目は、明治二十一年四月五日、江ノ島に遊んだことがわかる。歌集に次の二首を残す。雨に降られたらしい。



  しらぬ海や山見ることのうれしければいづくともなく旅立にけり
  ゑがくともかかるけしきはゑのしまの雨にぬれにし衣ぞいとをし


二度目は、明治二十六年。鎌倉由比が濱と題して次の三首。
  天つ空青海原も一つにてつらなる星かいさりする火か
  朝な朝な霞の底に色そひて遠山櫻今やさくらん
  木枯らしの吹きくるからに磯馴松千もとも同じ片なびき哉


また、鎌倉懐古と題して次の二首。
  高どのの三つば四つばのあととへば麦の二葉に雲雀なく也
  いつのよの庭のかたみぞ賎が家の垣ねつづきに匂ふ梅がか