天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

つばめ

大磯にて

 冬のカリ、春のツバメとして、古くから和歌になじみが深い。とは言っても、万葉集には次の一首のみであり、新古今集には出てこない。つばくらめは古称、つばくろは別名。


  燕来る時になりぬと雁がねは本郷(くに)思ひ
  つつ雲隠り鳴く       万葉集大伴家持
                
  すくすくと生ひたつ麦に腹すりて燕飛びくる春の山畑
                     橘曙覧

  のど赤き玄鳥(つばくらめ)ふたつ屋梁(はり)にゐて
  足乳(たらち)ねの母は死にたまふなり 斉藤茂吉
                    
  大工町寺町米町仏町老母買ふ町あらずやつばめ
                     寺山修司
  天命と非命のあはひ何ほどと思ふまぎれに飛ぶつばくらめ
                     安永蕗子