天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

清左衛門地獄にて

 コイ科の淡水魚。長野県佐久の養殖はよく知られている。鑑賞用に様々の模様の鯉が飼育されており、その価格たるや一尾で一軒の家が買えるようなものまである。魚博士・末広恭雄著『魚の博物事典』によると、コイは中央アジアが原産という。ちょっと待てよ、中央アジアには魚類が育つような水の環境が、古代にあったということなのか?黄河水系なら分かるが。鯉はかなり長生きするらしい。長寿の記録は、四十七年という。七十年以上との説もある。鯉は料理の基本にも使われる。代表的には、四条流の包丁式がある。鎌倉の八幡宮・舞殿で見たことがある。みごとな包丁さばきであった。わが国では石器時代から食用にされてきたという。古来、鯉にまつわる伝説も多い。ところで和歌、短歌には最も古くはいつ頃から詠まれたのであろう。万葉集には、鰻は詠まれているが、鯉は出てこないようである。


  鯉こくにあらひにあきて焼かせたる鯉の味噌焼うまかりにけり
                         若山牧水
  おもむろにからだ現れて水に浮く鯉は若葉の輝きを浴む
                         佐藤佐太郎
  水際なるわたしは薄い影のやう鯉らまつすぐに口あけて来る
                         河野裕子
  

 グルメのことでは、葛飾柴又の帝釈天参道の店に入って、昼食にとったうな重と鯉こくを思い出す。あの鯉こくは美味かった。