ぼんぼり祭
過去にも紹介したが、鎌倉鶴ヶ丘八幡宮のぼんぼり祭は昭和13年(1938年)に始められた。鎌倉近在の著名人に揮毫してもらった書画をぼんぼりにして、境内に立てる。今年は、8月6日から9日の四日間である。会社帰りに寄った。先ず、若宮大路に面したうなぎの茅木屋で夕食をとった。以前はよく利用していた店だが、最近はとんとご無沙汰している。飯粒がたっていることと山椒の匂いがきくことがよい。ビール、冷酒、イタワサ、新香でうな重ができるまでの時間を過ごす。
辺りが暗くなるに従って、どんどん人が集まってくる。舞殿では踊りが奉納されたりする。知っている範囲で、俳人と歌人の今年の作品を以下に紹介しよう。
今朝までの夢のつづきの花野かな 原 和子
頼朝の墓に山蟹すぐ隠れ 星野高士
松蝉や遥かなるもの引き寄する 星野高士
雲切れて一条の滝現れぬ 星野 椿
鎌倉の海山かけて秋立ちぬ 星野 椿
卓上の灯を大輪に咲かしめて夜半を生くる刻のさびしさ
篠 弘
鎌倉や草木蟲魚もろもろは霊の力貸し給へわれに
尾崎左永子
突堤のさきは海なりまつすぐに人は歩みて消えのこりたり
前川佐重郎
元旦に桜が咲いた鎌倉や杳々山荘歌人の家
太田絢子
切り通し七つを背にめぐらせて公は海路へおのが帆を張る
玉井慶子
人出がはげしくなると身動きできなくなるので早々に退散。以下は、わがスケッチである。
羽ばたきの音聞こえむか大揚羽
鎌倉やぼんぼり点す秋立つ日
ぼんぼりのあかりに眠る蓮の花
それぞれの店の前なるぼんぼりにそれぞれの絵の段葛道
「どん尻が実は一番」城山の言葉書きたる内橋克人
「鎌倉の音を求めて」むすび食ぶ自画像描けり服部公一
「白として赤く生きる」と朱の百合をぼんぼりに描く秋吉久美子
一匹のさんま見上げて猫あまたにこにことせりぼんぼりの絵は
亡き妻のおもかげならむわづかなる線に描きし新藤兼人
輪郭に迷ひは見えずアリモドキゾウムシを描く養老孟司
いきいきとシイラカンスを描きたり龍が得意の小泉淳作
八幡宮鳥居近くの白木蓮横山隆一の庭にありしを