天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

なでしこ

二宮町吾妻山にて

 周知のように秋の七草のひとつ。ナデシコ科の多年草。「常夏」の異名もあるとか。去年も書いたが、万葉集にも詠まれているくらい古くからある花なのだが、なんとも現代的で可憐な姿である。大和撫子とは、いつの時代かの日本の理想的な乙女のたたずまいであったのだろう。漢字では、撫子の他に、石竹花、瞿麦 などを当てる。


      かさねとは八重撫子の名なるべし
               曽良(「奥の細道」より)


  秋さらば見つつ偲べと妹が植ゑし屋前(には)の石竹花咲き
  にけるかも              大伴家持
  石竹花が花見るごとに少女らが笑(ゑ)まひのにほひ
  思ほゆるかも             大伴家持
  浜風の吹きくるなへに夢のごといくむらそよぐ
  なでしこの花             玉城 徹
  万葉の遠きむかしもかくの如咲(ゑ)まひ見せしか
  なでしこの花             大塚布見子