天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

女郎蜘蛛

江ノ島にて

 平安時代以降、蜘蛛は「ささがに」と呼ばれていた。ただし、奈良時代には「ささがね」と言ったとの説もあるが詳細はわからない。蜘蛛の形が小蟹に似ているからである。「ささがにの」は枕詞で、「くも」「いと」「いづく」「いかに」「いのち」などにかかる。
  吹く風につけても問はむささがにの通ひし道は
  空にたゆとも           藤原道綱母
                        
  ささがにのくもであやふき八橋を夕暮かけて渡りかねぬる
                   阿仏尼

女郎蜘蛛は、クモ綱クモ目アシナガグモ科に属する。一般には黄金蜘蛛も含めているらしい。ちょっと見には区別がつかないからである。江ノ島の裏道を歩いていたら、やたら目に付いたのでとりあげた。


      命終の蜂うごきけり秋の風        
      只管に待つ日々もあり女郎蜘蛛     
      そこここに虫の死を見る島暮し
      江ノ島敬老の日に母を連れ      
      青ければふぐりに似たり松ぼくり
      秋風やあわびの切身串焼きに


  繋留のヨットにつどひ麦酒酌む敬老の日の静かなる海
  全身を朱に染めたる阿吽像秋深まれる江ノ島に立つ