天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鵜の朝

境川にて

 鵜はペリカン目ウ科の水鳥の総称。世界には約30種類が分布する。わが国には、ウミウ、カワウ、ヒメウ、チシマウガラスの4種が棲息。鵜飼にはウミウを使う。上野不忍池は、世界的に珍しい大都市の中の鵜のコロニーらしい。万葉集には、12首が詠まれている。




  阿部の島鵜の住む磯に寄する波間なくこのころ大和し思ほゆ
                      万葉集山部赤人
  大井川かがりさし行くうかひ舟いく瀬に夏の夜をあかすらむ
                     新古今集藤原俊成
  春空に黒くあらはるる鵜のむれの首さし伸べてここに舞ひ来る
                       窪田空穂
  旱天の冬の屋上に飼はれゐるものにおどろく鵜の眼は緑
                       佐藤佐太郎
  
      道を走る蟹かと思ふ枯葉かな

 
  わが生れし大寒の日のアメリカに初代黒人大統領出づ
  おほかたは黒き肌なり歓喜せるホワイトハウス前の群衆
  川わたす水道管に止りたり日に背を向くる鵜の鳥の群
  前方に鯔の飛ぶ見ゆ首筋の白き川鵜はうかび出でたり
  羽ばたきて飛び立たざりし鵜の鳥の若さを思ふ朝の川面に
  やうやくに飛び立ちにけり幾たびもはばたきしたる後の川鵜は
  見るうちに鵜の鳥三羽順番に潜きては浮く朝の河口に
  丈低き松の木立を飛びゆけり何を探せる目白の群は
  灯台のレンズの脇にとまりたるトンビふくらむ大寒の朝
  カップ酒ふたつ飲み干し刺身食ふ椅子一脚が魚屋の前