天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

塚本短歌の文化的背景

『塚本邦雄の青春』

 塚本邦雄に師事した小説家・楠見朋彦の『塚本邦雄の青春』(ウエッジ文庫)を読み終えた。これは小説ではなく、丹念な資料渉猟に基づくドキュメントである。既に周知のことだが、この本に補足して塚本短歌の文化的背景を箇条書きにすれば、以下のようになる。


1.旧・新約聖書
2.西洋絵画: 倉敷・大原美術館
3.現代詩: ランボーコクトー安西冬衛春山行夫
4.現代俳句: 高柳重信、富澤赤黄男
5.映画: 特にフランスもの
6.音楽: 特にシャンソン
7.呉の海軍工廠
8.現代短歌: 『日本歌人』のメンバー。前川佐美雄、斉藤史
  坪野哲久、葛原妙子、杉原一司(方法論)
9.日本古典文学: 中世歌謡(梁塵秘抄閑吟集、田舎草紙)、
  新古今集


 ただ、物足りない点があった。ひとつは、岡井隆との交流・影響に関する記述が希薄、また聖書に関わる短歌作品の鑑賞がほとんど無い など。
この本は、文字通り塚本邦雄の30歳くらいまでの活動を詳細に記述したものなので、塚本の西洋文化への傾倒が中心になっている。塚本が日本の古典文学に本格的に取り組むのは、45歳になってからであった。