天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鎌倉湖のあたり

茶の花(鎌倉・称名寺にて)

 鎌倉今泉にある散在ガ池(通称・鎌倉湖)のあたりを歩く。ここもわが定番の散策ルート。山の農道の傍らに背の低い蜜柑の木が一本あって、実がいくつも熟れていた。称名寺の庭には、かりんの青い実が葉の散った木についていた。瀧の下り口には茶の花が咲き残っていた。

  
      松籟は高みにありて笹子啼く
      松籟の木の下蔭の笹子かな
      音高く木の実おちたり森の朝
      寺庭に犬吼えやまずかりんの実


  地図ひろげ道路の脇に佇めり朝日に黒きビジネス・スーツ
  山道に朝の日差せば充実のかぐのこのみはかがやきにけり
  あたたかき日差好めるエゴ、サクラ、コナラ、クヌギ
  陽樹なりけり


  日の弱き森にも生うるクス、アオキ、シイ、クス、カシは
  陰樹なりけり


  音たかく木の実落ちたり朝影の森のそこひの散在ガ池
  かりんの実ながめて立てる寺庭のわが身を責めて子犬吼えたり
  高みには不動堂あり底ひには水音たかき陰陽之瀧
  秋空にうすく煙のたちのぼるゴミ処理場の高き煙突
  柿、バナナ ビニール袋に透けて見ゆ道をよぎれる老人の手に
  吸殻を足にもみ消しあくびして若き女は電車に乗りぬ