天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

稲田

近所のたんぼにて

 稲の起源は、インドから東南アジアの熱帯地方ではないか、と思われる。紀元前数千年には、すでにインドや中国で栽培されていた。栽培用の稲には、アジアイネとアフリカイネとあるが、後者は地域がごく限られるため、イネといえば通常、前者を指す。日本へは前1世紀ころに北九州に伝わり、次第に東進した。


      したたかな稲になひゆく法師かな
                   蕪村
      ところどころ家かたまりぬ稲の中
                  正岡子規
      みちのくの短き早稲の穂をつかむ
                  山口青邨


  稲搗(つ)けばかかる吾が手を今夜もか殿の若子(わくご)が
  取りて嘆かむ              万葉集・東歌
                    
  きのふこそ早苗とりしかいつのまに稲葉そよぎて秋風ぞ吹く
                    古今集・よみびと知らず
  打ちなびく田の面のほなみほのぼのと露ふきたててわたる秋かぜ
                    新千載集・二条為定
  稲刈りて淋しく晴るる秋の野に黄菊はあまた眼をひらきたり
                         長塚 節
  ひと握りの尺にも足らぬ稲束をつきつけられて何故かたじろぐ
                         渡辺順三


  倒されし実れる稲の田を見れば収穫までの嘆きしのばゆ
  稲刈りし後の田に立つアオサギは朝の餌を待つ昨夜ふりし雨