天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大楠山

衣笠山から見た大楠山

 三浦半島で最高峰、といっても横須賀市に属する標高242メートルの小高い山。独立峰ではないので、山容は定かでない。山頂近くにはNTTの無線中継所やレーダ雨量観測所がある。JR逗子駅から衣笠行きのバスに乗って、大楠山登山口で下車、そこから阿部倉の沢を経由して登った。従来は、前田橋側から登ったので、このルートは今回が初めて。帰りは反対側の斜面を海側の前田橋バス停に向けて歩いた。昨日とはうって変わって快晴であったが、山頂は風が強かった。
 なお、前田橋バス停から山頂に至る山道は、春の桜の季節は特に見ごたえがある。


      冬隣浮世はなるる富士の嶺
      松籟の林にひかる冬の海
      群なして白馬駈けくる冬の海


  電線の画せる空にほの白く浮世離れの富士の嶺見ゆ
  阿部倉の谷間をゆけばからころと鳴く声きこゆ水音の中
  円柱の先端におくアンテナは球体にして白くかがやく
  楠の木の一本だにも見当たらぬ大楠山の頂きに立つ
  強風に吹かれて立てる鉄塔の心もとなき螺旋階段
  山頂の施設守りて住む人の庭に咲きたり皇帝ダリア
  海坂を白馬の群の駈けくるか天高くして風つよき日は
  マンションの宣伝文句は読まざれど朝な夕なにティッシュをもらふ


 ちなみに、司馬遼太郎街道をゆくシリーズ」『三浦半島記』の中の「三浦大根と隼人瓜」という章に、大楠山の情景がゆったりとした筆致で書かれている。