天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

菜の花

二宮町吾妻山にて

 アブラナ科の一、二年草。欧州からシベリアにかけての原産。わが国には、原種が古く中国から渡来した。種子から菜種油をとる。


  もも草の萌えいづる庭のかたはらの松の木蔭に菜の花咲きぬ
                       正岡子規
  遠つあふみ大河ながるる国なかば菜の花さきぬ富士をあなたに
                       与謝野晶子
  菜の花の花のさかりや傾城の魂のごと蝶ひとつ来る
                       吉井 勇
  ここしばらくは死を思ふなく過ぎんかと菜の花にふる雨を見てをり
                       佐藤志満
  菜の花の黄のひろがりのただ中に蒼くたたまるは天の香具山
                       岡野弘彦
  垣間見しものにあれども脚あげて雲雀はあるく菜の花畑
                       安永蕗子
  振りむけばなくなりさうな追憶の ゆふやみに咲くいちめんの
  菜の花                  河野裕子