天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

菜の花

二宮町吾妻山にて

 菜種油を採取する油菜の花をさす。菜種油の灯明が広まるのは江戸時代のことなので、菜の花が大規模に栽培されるのは、それ以降のことらしい。油を絞った残り糟は、肥料になった。


     菜の花や淀も桂も忘れ水       言水
     菜の花の中に城あり郡山       許六
     菜の花や鯨もよらず海暮ぬ      蕪村
     家々や菜の花色の燈をともし   木下夕爾


  菜の花に千代紙を着せて雛とせし海女の初子の祭やさしも
                     青井 史
  菜の花の黄の咲きいづる崖の上ひかり幾日ののち溢れむや
                     高嶋健一
  硝子うすき夜明けと思ふひんがしの風のみなもと菜の花ならむ
                     雨宮雅子
  曇る日は殊に明るき菜の花を今日は刈らむと近寄りてゆく
                     日影康子
  かの国のマスゲーム思ふ菜の花が風に靡きて翻る時
                    春日いづみ
  菜の花の咲きひろごりてはてしなしその菜の花のかがよひ
  ゆらぐ                都筑省吾