小池 光にまねぶ
今、小池 光の歌集『静物』(2000年刊行)を読み返している。助詞や副詞の使い方、固有名詞、本歌取、表記、漢字の読み などさまざまの技法が使われている。それを真似してみた。
金麦とふ麦酒は飲まぬカラス来て自転車置き場の屋根にもの食ふ
バスを待ち大路の春を疑へり弥生七日の風の寒さよ
*石田波郷の句に「バスを待ち大路の春をうたがはず」がある。
次々にバスは来れどわが待てるバスの来ざればベンチあたたむ
橋桁のレールをすべる箱きたり人を下せり大船駅に
橋桁のレールをすべる箱に乗り片瀬の山をわが越えゆけり
停車せる駅のむかひに灯ともせり赤看板のやきとりしんちゃん
三月のプールの硬き面の下にピストル隠す藻か繁茂せり
*山口誓子の句に「ピストルがプールの硬き面にひびき」がある。
それぞれの岩にうの鳥佇めど風さむければ羽根ひろげ得ず
串刺しの鮑切り身に甘垂れを塗りて焼けるを人ならび見る
西安の大興善寺に護摩焚ける恵観法主の頭(づ)は汗を噴く
黄色(わうしよく)の袈裟の来たれば手を合はす後七日
(ごしちにち)御修法(みしほ)の教王護国寺
いつの世の誰か置きたる力石 幹失へる銀杏のそばに
鮭トバを買ひたけれどもレジ前の人列(じんれつ)長し
あきらめて去る
エコポイントと交換したる商品券デパ地下に切りカツ、
五目(ごもく)めし
(追伸)以上の一連は、三月某日、次のような散歩の途上で出会った光景からできた
ものである。
藤沢駅(東海道線のホームでぼんやり電車を待つ)
↓(JR東海道)
大船(ベンザブロックを買い、江ノ島行のバスを待つ)
↓(湘南モノレール)
江ノ島(高野山真言宗最福寺の別院の江ノ島大師に入って写真集
を見る)
↓(小田急)
藤沢(さいか屋の地下で買い物)