天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大銀杏春の嵐に倒れたり

鶴ケ岡八幡宮にて

 3月10日未明(四時半頃)のことであった。鎌倉鶴岡八幡宮の大銀杏が、春の嵐に倒れてしまった。鎌倉幕府三代将軍・源実朝を暗殺する際に、公暁が隠れたという伝説の大銀杏である。高さ30メートル、幹の周囲は6.8メートル。樹齢推定千年という。悲しいことである。


  禰宜たちの眠りをやぶる大音声大き銀杏はいのち終へたり
  垂乳根の大き銀杏は千年を生き永らへて今朝倒れたり
  暗殺の日は雪降れり奇しくもや大銀杏倒る雪散れる日に
  千年を支へし多(さわ)の根は切れて大き洞開く幹の根方に
  倒れたる大き銀杏を見つめをり首筋さむき三月十日
  倒れたる銀杏見下し悲しめる寒緋桜に目白があそぶ
  白々とその死横たふ大銀杏断ち切られたる根は深からず
  餌撒けばカモメ騒ぎて鴨を追ふ数のうへでは叶はぬカモメ
  流鏑馬の路傍に立てる楠の木の梢にいこふ白鳩のむれ
  あを鷺の鋭きまなざしが捉へたる小魚あはれ春をあそべる
  本堂にともす明りの幾百年比企一族の滅びし谷戸
  戦勝を祈りて成りし大巧寺安産祈願の今「おんめさま」


 八幡宮では、なんとか歴史を残したいということで、倒木に防腐剤処理をするとか、DNAを引き継ぐひこばえを後に植えるとか、専門家と相談しているらしい。今朝の新聞によると、幹を根本から4mのところで切り離し、上部の幹と枝を保管し、下部をもとの位置に植え直して、細い根からの再生を図ることになるという。

[追伸] 移植される場所は、もとの場所から西に7mほど離れた位置になった。