天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

八重桜

藤沢市にて

 他の桜よりも遅れて重弁の花を咲かせるサトザクラである。ボタンザクラとも言う。


  いにしへの奈良の都の八重桜けふここのへに匂ひぬるかな
                      伊勢大輔
  白雲のたつたの山の八重ざくらいづれを花とわきて折りけむ
                      道命
  君が娘(こ)は庭のかたへの八重桜散りしを拾ひうつつとも無し
                      若山牧水


 藤沢新林公園を歩いてきた。八重桜は、公園の中ではなく、近くの小さな工場の裏手に道路に面して立っていた。


    むくろじの梢に新芽ほのかなる
    
  大木のむくろじの枝をつたひつつコゲラはギイと啼きにけるかも
  ひとときも静止せざればうぐひすの姿撮りえず里山の道
  啼き声か木をうつ音か見上ぐればコゲラらしきが葉蔭にうごく
  ららろろるる暗き木の間に鳴る音の元をたどればコゲラなりけり