楠は関東南部から九州に生育するクスノキ科の常緑高木で、二十メートルを越える大木になる。楠の森は神韻縹渺として心が洗われる思いがする。五月は若葉が目に沁みる。楠から樟脳ができるように、その材は、防虫剤、香料の原料にもなり医療に用いられる。
神事近き作り舞台や楠若葉 河東碧梧桐
樟若葉樟一木のほとけかな 安東次男
楠の木の若葉の下を歩みゆく降りいでし朝の雨あたたかく
水野昌雄
くすのきの稚き芽ぶきに冴えざえと風わたるとき揺るる額髪
岡野弘彦
樟の木の若葉にしぶく昼の雨阿波より土佐に山越えむとす
岡野弘彦