天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

揚羽蝶

北鎌倉円覚寺にて

 鱗翅目アゲハチョウ科の一種。幼虫はカラタチ、ミカン、サンショウなどの葉を食べ、蛹で冬を越す。アゲハチョウ科の蝶は、世界に約550種。カラスアゲハ、ウスバキチョウ、ギフチョウなどが含まれる。


  黒揚羽生霊のごとさまよへり人に家ありて灯をともすころ
                    大野誠
  緑濃き下蔭を舞ひ黒揚羽〈危険な関係(リエゾン・ダンジユ
  ルーズ)〉を愉しむごとし      篠塚純子
                    
  障テ揚羽しづかに水を離るると陽の若者にひらく肩甲骨
                    浜田 到
  中空に黒蝶ふたつとどまりてわれにも盛夏きたりとおもふ
                    前川佐重郎
  くちなしのやはらかき葉をたべつくし黒き揚羽の羽化は始まる
                    高 蘭子
  影一つ道の面に来て黒揚羽わが前飛ぶを見れば逸れゆく
                    高橋則子
  わが影より出でてまつはる黒揚羽、民間人と呼ばれてゐたり
                    渡 英子
  大仏も弥勒も眠る春の夜を烏揚羽は羽化遂げてゆく
                    喜多隆子