蝉
半翅目セミ科に属する昆虫の総称。世界には約千五百種が分布するという。日本には三十種あまりいるというが、六種くらいしか知らない。万葉集と新古今集について、蝉の歌を調べると、それぞれ5首と6首が載っている。
石走る滝もとどろに鳴く蝉の声をし聞けば都し思ほゆ
万葉集・大石蓑麻呂
蝉の声聞けば悲しな夏ごろもうすくや人のならむと思へば
紀 友則
ふるさとの木に近づけば蝉だるまそんなに怖くないさ僕だよ
高野公彦
太幹に蝉とびとびにゐる真昼横這ひしつつその一つ消ゆ
高野公彦
激震の瓦礫の地より生れし蝉しづかに幹をよぢりゆく音
石橋妙子
ぽつんと落ちて蝉仰向けに死ににけり老木の下死にごこちよき
斎藤 史
ひと夏を鳴き尽くしてや地に転(まろ)ぶ蝉を送れる風の葬送
雨宮 潔
秋風に急かさるるごと蟻のむれ地の面に落ちし蝉にとりつく