天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

月のうた(3)

上弦の月(web「天体写真」から)

 擬人法で月を、月読壮士(つくよみをとこ)」、「月人壮士(つきひとをとこ)」、「ささらえ男」などと呼ぶことがある。万葉集にでてくる。


   7日目  上弦の月: 半月、弦月(げんげつ)、弓張月。
     天の原振り放け見れば白真弓張りて懸けたり夜道は
     よけむ           間人大浦『万葉集


     天の原行きて射てむと白真弓引きて隠れる月人壮士
     (つきひとをとこ)       作者不詳『万葉集


     相庇ういのち互みに年経るに門に水打ちてかかる半月
                        近藤芳美
     やはらかき暁の半月正面に見ゆるよろこびわが窓ひらく
                       佐佐木由幾


  13日目  十三夜: 昔は十五夜に月見をしたら、必ず十三夜にも
       月見をするものとされていた。十五夜の月見だけでは、
       「片月見」といって嫌われていた。後の月、後夜の月、
       名残の月。
     十三夜月の下びに栗むきて子等とたのしむただひとときを
                         今井邦子
     たましひ色の光り守りつつ十三夜の月暈(げつうん)ややに
     崩れゆくなり             生方たつゑ


     十三夜明しあかしと告げなむに父母あらぬ我とわが犬
                         安永蕗子
     窓のそとは海よりのぼる後夜の月あたりの暗き浜を照らしぬ
                         中村憲吉
     ベランダに出て来て後夜の月みればはるかなる父の寝嵩
     (ねかさ)思ほゆ             高野公彦