原発の歌
東日本大震災による東電・福島原発事故は、全世界に大変貴重な教訓を残したように思う。一言で言えば、前提条件が崩れた時の対処法をしっかり立てておくこと。絶対安全などあり得ないのだ。即ちミスを犯す、事故は発生するという認識の下で、その場合の対処法を設計し運用することが要諦。最悪の場合を想定して対処法を施しては、経済的に成り立たない、というなら、原発は時期尚早ということになる。
技術的には無力ながら、歌人には危機感があった。
さみだれにみだるるみどり原子力発電所は首都の中心に置け
塚本邦雄
白鳥のねむれる沼を抱きながら夜もすがら濃くなりゆくウラン
岡井 隆
プルトニウムの昧爽(よあけ)よ来よと思ひけむ希(ねが)ひけむ
されど人智さびしき 岡井 隆
出たばかりの「短歌研究」五月号に、岡井隆の「三月十一日以後に思ったこと」一連十五首が載っている。うち三首をあげておく。
原発はむしろ被害者、ではないか小さな声で弁護してみた
原子核エネルギーへの信頼はいまもゆるがぬされどされども
原子力は魔女ではないが彼女とは疲れる、(運命とたたかふ
みたいに)