天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

卯の花

鎌倉・浄智寺にて

 空木(うつぎ)の花のこと。空木はユキノシタ科の落葉低木で、北海道から九州にかけて日当りのよい山野にはえる。5月から6月に花が咲く。「卯の花のにおう垣根に・・」という唱歌があるように、庭木、生垣、畑地の境木として利用される。枝が中空なので空木という。


  卯の花の咲く月立ちぬほととぎす来鳴き響(とよ)めよ
  含みたりとも          万葉集大伴家持
                    
  ほととぎす我とはなしに卯の花の憂き世の中に鳴きわたるらむ
                  古今集凡河内躬恒
  卯の花の咲きぬる時は白妙の波もてゆへる垣根とぞみる
                  新古今集・藤原重家
  卯の花をかざして暮のもどりぶね汽鑵音(かまおと)早く
  なりにけるかも              四賀光子

                       
  卯の花は白さえざえと老眼に充ちてあるなり核の世紀に
                       山田あき
  卯の花のにほふ垣根をしかと見き舁かれて門を出づる柩が
                       塚本邦雄


 ところで、唱歌「夏は来ぬ」の作詩は、万葉集の研究家でもある歌人佐佐木信綱である。それ故か、歌詞には万葉集に出て来る言葉が満ちている。まことに日本にふさわしい歌といえる。作曲は、小山作之助であった。