天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

感情を詠むー「うれし」(1/2)

 「うれし」は、晴れ晴れとした良い気持を表す言葉。➀喜ばしい。うれしい。➁かたじけない。ありがたい。 語源は「うれ(心)」。

 

  帰りける人来れりといひしかばほとほと死にき君かと思ひて
                   万葉集・狭野弟上娘子
*ほとほと: すっかりそうなるわけではないが、事態が進んでそれに非常に近い
 状況になるさまを表わす語。もう少しのところで。すんでのことに。

 

  偽りのなき世なりせばいかばかり人のことの葉うれしからまし
                    古今集・読人しらず
  雪つもるおのが年をば知らずして春をばあすと聞くぞうれしき
                      拾遺集源重之
  いかでかと思ふ心のあるときはおぼめくさへぞ嬉しかりける
                    拾遺集・読人しらず
*おぼめく: ➀はっきりしないさまである。あいまいである。ぼやける。
 ➁いぶかしく思う。不審に思う。

 

  世の中に嬉しきものはおもふどち花見てすぐすこころなりけり
                      拾遺集平兼盛
  あふことを今宵と思はば夕づく日いる山のはも嬉しからまし
                      金葉集・源雅定
  ぬるるさへ嬉しかりけり春雨に色ます藤のしづくとおもへば
                      金葉集・源顕仲

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