天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

お玉杓子

横浜市舞岡公園にて

 カエルの幼生。魚類によく似た生理的機能をもち、水中で常に鰓呼吸している。2、3カ月で変態し、先ず後肢が、次いで前肢が生えて、尾は次第に体内に吸収され消失する。俳句では、季語「蝌蚪(かと)」の傍題で、他に蛙子、蛙生る、蝌蚪生る、蝌蚪の紐 などがある。


     お玉杓子あそぶ古墳の影の中   大串 章
     蝌蚪に足少しいでたる月夜かな  長谷川双魚
     蝌蚪に打つ小石天変地異となる  野見山朱鳥
     考えてをらない蝌蚪にの頭かな  後藤比奈夫


  霞みつつまぶしき朝を来り見る池に蝌蚪ら跳ねみな歓喜せり
                      前川佐美雄
  水中に蝌蚪くろぐろとうごきゐてわが心知らずみな歓喜せり
                      前川佐美雄
  山かげの沼に群れをるおたまじやくし春のえにしを忘れ
  ざらめや                 前登志夫


  かぎりなく世界が崩れゆく日にもおたまじやくしは池に
  涌くなり                 前登志夫


  懐手しているようなおたまじゃくしの胸からひょんと手が
  飛び出した                永田和宏


  蝌蚪の腹むずむず泥をよろこべり窪あれば窪にかたまりて
  寄る                   永田和宏